ジゴワットレポート

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原作からの改変(再構成)について考察・検討してみる。『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』

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期待7割・不安3割ほどで臨んだ、実写版ジョジョこと『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』。ここ数週で連続しているジャンプ漫画実写化作品の流れにおいて、本作もそれらと同様に、とても丁寧に原作の魅力を再構成したものに仕上がっていたと思う。

 

先日更新した小説版『岸辺露伴は動かない』の感想記事にも書いたが、ジョジョの世界を「荒木先生以外」が作品化するというのは、決してハードルが低い行いではないだろうな、と。

あまりにも荒木先生の引力が強すぎる原作なので、下手に真似れば大火傷だし、かといってアレンジしすぎても大火傷だし ・・・という感じで、しかも連載も長くファンも多く、近年はアニメ化・ゲーム化とコンテンツとして加速度的に巨大化している作品でもある。

 

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蓋を開けてみれば、「特徴的な擬音の挿入」も「ジョジョ立ち」も無いが、それでもかなりの精度で「ジョジョ」と言える作品だったと思う。

まあ、漫画と実写映画ではそもそものメディアが異なるので、変に擬音を入れたりポーズをドカーン!と決めてみたりをしなかったのは、正解だろう。

原作の読み応えをそのまま映像化したアニメ版とは異なるアプローチで、非常に興味深い。

 

また、アニメの4部は「ちょいとお洒落な街並みに潜む不穏な影」という雰囲気で原作を映像化していたが、今回の実写版は思いっきりストレートに「流血上等!バイオレンス&サスペンス!」に仕上げられており、その方向性は三池崇史監督が得意とする作風とも親和性が高かったように思える。

また、スペインロケにより組み上げられた杜王町は、驚くほどに原作のそれが持つ「日本だけど日本っぽくない町」という印象に近く、よくもまあこんな唯一無二のヘンテコ空間を創り上げたな、と感嘆の溜息。

もっとあの街並みをじっくり映して欲しかったくらいだ。

あと、虹村家を中心とした美術も良かったですね。端的に言えば、「ちゃっちくない」。

 

※以下、映画本編のネタバレがあります。

 

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さて、本題の、原作からの改変について。

今回の実写版が面白かったのは、かなりの長丁場となる原作4部の序盤をいかに1本の映画としてまとめるか、という部分に意欲的に挑んでいた部分だ。

 

改めて考えてみると、主人公の「東方仗助」という人物は、原作既読者には言うまでもなく「ジョースターの血統の者」であり、気高く・秘めたる熱さがあり・魅力的な人間性に溢れた正義の人間な訳だ。

ただこれは、ジョナサン・ジョセフ・承太郎を見てきたからこそ、もはや刷り込みのように抱かれる仗助に対するイメージであり、仮にそれを取っ払って4部から読み始めたとするならば、果たして我々は仗助にどのような印象を抱くのだろうか。

 

4部を単体で映画にする以上、ディオやDIOやジョセフの話をくどくどやっても仕方がない。

だからこそ、今回はその「ジョースターの血統」という要素を極力省略し、シンプルに主人公たる「東方仗助」のキャラクター造形を強固にする試みが用いられてる。

 

そして、その試みを映画全体に通された「父親と息子」という縦筋(テーマ)とリンクさせるという、かなり面白い状況が生まれているのだ。

 

具体的には・・・

 

【父親と息子】

・ジョセフと仗助

・実質の父親代わりであった良平(祖父)と仗助

・当の息子に殺された父親とアンジェロ

・異形の怪物になってしまった父親と虹村兄弟

 

原作よりかなり多めに祖父である良平の仕事風景や仗助との日常を描き(そしてその彼を原作通り死亡させ)、実の父を知らなかった仗助は育ての父ともいえる祖父を失いながらも、父親を殺した連続殺人犯や、異形になってしまった父親を殺そうとする兄弟と戦っていく。

そんな戦いを通してはじめて、彼の中で祖父の意思を継いだ「この町を守る」という決意が生まれていくのだ。(ここをラストシーンに持ってきているのが上手い)

 

つまりは、「ジョースターの血統」に頼らない形で東方仗助に「正義」や「気高さ」を身に付けさせていく作りになっており、非常にロジカルながら効果的な再構成だな、と。

 

一介の高校生の成長物語として分かりやすい構成にもなっているし、言うまでもなく「父と子」というテーマは原作でも何度も扱われてきたものである。

「ジョジョらしさ」を保ちながら、「ジョースターの血統」要素を薄くして、新規鑑賞者にも分かりやすいように成長譚として再構成する。

それが成功しているのが、今回の実写版の一番の強みではないだろうか。 

 

もちろん、手放しでべた褒めとは思っていなくて。

例えば虹村兄弟編をもうちょっと圧縮してやってくれたら間延び感は軽減されるのかな、とか、スタンドの能力の描写について新規鑑賞者にはあまりにも不親切(説明不足)なんじゃないか、とか、スタンドはせっかく造形が良いのだから初登場シーンくらいはもっと舐めるようにじっくり見せて欲しい、とか、思うところも沢山ある・・・。

 

それでも!

バッド・カンパニーの「戦争映画っぽい演出をミニチュアの撮り方でやる」というフェチ満載なシーンだったり、ザ・ハンドの着ぐるみ(怪人スーツ)っぽい質感や、アニメの声優さんに引っ張られながらも好演と言い切れるだろう仗助や億泰、キャラのアレンジが見事にハマっていた形兆の兄貴など、諸々の加点が多いのが楽しい。

ジョジョの原作大ファンだと自負しているが、自信を持って他人に勧めたい作品だった。

 

ちなみに余談だが、形兆役の岡田将生は生粋のジョジョオタクということで、読んでいてとても楽しかったインタビューを貼っておきたい。

 

www.cinematoday.jp

 

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さて、話を「原作からの改変・再構成・アレンジ」に戻す。

 

今回最も「変わっている」部分として、誰もが挙げるだろう、形兆の末路。

原作では、電気のスタンドことレッド・ホット・チリ・ペッパーに殺害される訳だが、今回の映画ではまさかのシアーハートアタックがその下手人となっている。

 

原作4部はとても「サブ」のエピソードが多く、そのどれもが魅力的なのが言うまでもないのだけど、仮に3部作で実写映画化するとしたら、やはり明確な「敵(ラスボス)」を設定して目的を絞った方がやりやすいのは明白だ。

原作ではいわゆる中ボスに相当するレッド・ホット・チリ・ペッパーの登場を変更することで、倒すべき因縁の敵であるラスボス・吉良吉影に要素を集中させる、という意図だろう。(例えば、億泰にとっては吉良が実の兄の仇となる)

これ自体はお見事な改変である。

 

続編で、重ちーを仗助や億泰と必要以上に仲良くさせて、これもまた吉良に殺させておけば、尚一層「ラスボス」としての集中線が太くなる算段だ。

 

しかし冷静に考えると、なぜ吉良は形兆を殺したのだろうか。

「静かに暮らしたい」彼は、自身の快楽に基づくもの以外の殺人は、なるべく犯したくないはずである。

形兆がなんらかのきっかけで連続殺人犯である吉良の正体に感づいていたのか、もしくは、映画版の吉良はスタンド使いを殺して同類を超越することで快感を覚える性癖も兼ね備えているのか、現段階では想像するしかない。

この辺りについて、形兆が吉良の存在を台詞の端に臭わせるとか、そういう追加があった方がより自然な改変になったのかも ・・・などとも考えてしまう。

 

また、原作ではDIOと肉の芽について説明された虹村兄弟の父親についても、今回の映画では「なぜあんな姿になったのか」の説明が無かったと記憶している。

この辺りを原作に忠実にいくのか、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』のロンのように、吉良のキャラクターやその周辺を原作からアレンジすることで「全て吉良のせいだったのだ!!」みたいにしてしまうのか、その辺りも楽しみな部分である。

 

1回2時間の3部作と想定するならば・・・

 

第2章

・由花子と康一のスタンドお披露

・重ちーや岸辺露伴が登場

・吉良吉影も登場

・重ちーを殺した吉良を皆で追いつめるも逃げられる

 

第3章

・吉良が差し向けてくるスタンドと戦う仗助(エニグマあたり?)

・その戦いに岸辺露伴も参戦(ハイウェイ・スター戦をアレンジ)

・吉良は新しい家族と奇妙な生活を繰り広げる

・バイツァ・ダスト編

・全員で挑む最終決戦

 

・・・大筋、こんな感じだろうか。

 

ぶっちゃけ、露伴をいなかったことにしてしまった方がまとまりやすいと思うのだけど、随一の人気キャラをオミットする判断は難しいだろう。

何より根本的に登場人物が多いんですよね、4部。

無理だと分かっていながらも、連ドラで観たいなあ、と思ってみたり。

 

そんなこんなで、実写版ジョジョ、非常に楽しかったです。

興収が厳しいなんて声も聞こえてきますが、是非とも続編が・・・続編が観たいです・・・本当に・・・。

 

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あと、このメインテーマ、すごく良いですよね。スリリングな「圧」がある。

 

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