ジゴワットレポート

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映画版『パワーレンジャー』感想 戦隊モノだけど戦隊モノじゃなくて、やっぱり戦隊モノだった

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未だに毎週「スーパー戦隊シリーズ」を追っかけているオタク野郎として観ない訳にはいかない『パワーレンジャー』。製作決定の報からずっと楽しみにしていて、結果、「待ってて良かった」な作品でした。そもそも「パワーレンジャーってなに?」という話は死ぬほど長くなるので、詳しくは公式サイト等のヒストリーのページを読んでいただくとして・・・。

 

要は、「戦隊モノのアメリカローカライズ版」であり、今回の2017年の映画はその「ローカライズ版」のリブート映画版、という立ち位置に当たる。よって、「日本の戦隊シリーズがハリウッドで映画化」という文言は、半分正解で半分間違いといった、面倒なオタクが言論統制の巡回を行うタイプの背景となっている。

 

パワーレンジャー(字幕版)

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※以下、映画本編のネタバレがあります。

 

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大まかな感想は鑑賞後にTwitterにほとんど書いてしまったので、それを転載。

 

 

あと、吹替版がとにかく最高でした。勝地涼に広瀬アリス、杉田智和に水樹奈々ときて鈴木達央。更には戦隊シリーズお馴染みのボンテージお姉さん敵キャラに沢城みゆきときたもんだ。この「捻り潰しなさい!」の安定感よ。

 

 

本作の感想として多く目にするのが、「ティーンエイジャーの物語としては丁寧で良かったが、戦隊モノとして観ると食い足りない」というもの。確かにそれは自分も感じたところで、5人そろっての初変身シーンがまさかのラスト20分とは思いもしなかった。

 

でも、その「戦隊モノとして食い足りない」というのは、あくまで「(日本の)戦隊モノとして食い足りない」という意味だろう。「パワーレンジャー」として長いこと海の向こうで独自の発展を遂げてきたシリーズに対して、「日本の戦隊モノと比較して・・・」という視点自体がもはやそぐわないのかな、という気もしなくはない。続編云々はともかく、1本の映画としてなら今回のこの構成で充分にも思える。

 

馬鹿やって将来を棒に振った若者、友人関係の悪化に後悔を覚える若者、どこかズレていながら死んだ父と会話する若者、介護という立場を背負った若者、自身の性と家族関係に悩みを抱く若者。パワーレンジャーに選ばれてしまった彼らは、何一つその問題を明確な解決に導くことなく、 しかし「それを共有し合える仲間」を手に入れることで精神的に成長する。

 

「仲間を思い、通じ合うこと」で初めて「変身」できるという設定により、「変身」するだけでクライマックスに突入。誰よりも優しく仲間想いだったブルーレンジャーことビリーの死が結束の決定打になる展開も良い。素直に良い。

 

 

とにかくこの5人のキャラクターがとても良くて、いわゆる「かわいく」感じたのなら、それだけでお気に入りになるだろう。変身してからのシーンは確かに短かったけど、あの5人が必死に力を合わせて戦っているだけで「かわいくて」仕方ない。

「レッド以外にも個別の武器を・・・」とか「もうちょっとマスクオン姿を見せてくれ・・・」とかが頭をよぎりながらも、基本は「5人!頑張れ!色々!色々あるけど!でもやれる!やれるぞ!頑張れ!」が強いので、さしたる問題ではなかった。

 

戦闘シーンを昼間にやってくれたのは良かったし、敵の巨大クリーチャーが街に降りていく際の引きのカットとか物凄く「それっぽい」感じで最高だった。ゾードが横並びで走るのもお決まりの構図だし、主題歌がジャジャーン!って鳴り出すのもたまらない。(もっと長く流して欲しかったけど!)

 

アイアンマンにスパイダーマンにバンブルビーなど、小ネタも配置も良い塩梅。あと、「崖の上でベストキッドごっこか?」には笑い声を堪えるに必死でした。

 

何より、最後の決め手(「よけて!」「つかんで!」のやつ)がとても好きだ。同日に観た『カーズ クロスロード』もそうだし、パッと思いつくのは実写版『進撃の巨人』後編もそうだったけど、「ふとしたシーンのテクニックや戦法がここぞという場面で決め手になる」という展開は脳汁がドバドバ出る。

 

jigowatt.hatenablog.com

 

これをやりたいがための完全人型メガゾードだったのかな、というのは邪推が過ぎるか。

 

 

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「日本の戦隊モノが源流だけど、もはや実質的にはそうじゃないのかもしれない」と上で書いたけれど、今作は、更に一周して「戦隊モノ」だな、とも思うのだ(ややこしい)。つまりは、「個々が真の意味でチームになるまでのドラマを重視する」「変身する前の人間としてのキャラクターを濃く描く」という傾向は、源流のスーパー戦隊シリーズ、それも21世紀の比較的近年のものに顕著だとも言えるのだ。

 

戦隊シリーズでは、取りあえず結成されたチームが1年かけて色んな敵と戦いながら真に絆を深めていく訳だが(もちろん例外もある)、今作はその順序が逆になっているだけで、かなり近年の手法に近いなあ、と。

 

まあそれは、そもそも東映の特撮ヒーローが時代と共に海外ドラマのような連続性や謎解き&群像劇を取り入れてきた背景もあるし、『パワーレンジャー』がわざわざそれに寄せてきたとも考えにくい。昨今盛んなアメコミ映画も、ヒーローのヒーローたる活躍の前に、まずはそれに変身する前の個のキャラクターをしっかり描く(観る側にキャラクターを好きになってもらう)という手法がメインストリームだ。

 

それが結果的に、「ヒーローだから応援したい!」ではなく「彼(ら)だから応援したい!」を生み、そっくりそのまま「ヒーローとはスーツを着ることとイコールなのか、否」といったヒーロー定義論の構造を上手いこと誘発していく。

 

そんな、大きな時代の流れの中で、結果的に昨今のスーパー戦隊と今回の『パワーレンジャー』に似た点を感じられたことは、とても嬉しい発見であった。私は確かに「彼(ら)だから応援したい」にハマってしまったし、だからこそ、変身後がたったの20分でも、食い足りなさがあっても、それらがあまり気にならなかったのだ。

 

近年では『烈車戦隊トッキュウジャー』とかが好きだったが、特に終盤、「トッキュウジャーを応援」した覚えはなくて、完全に「ライトたちを応援」している自分しかいなかったように思う。

 

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まあもちろん、そこに付加する形で「もっとケレン味のある戦闘シーンやカット」「武器やロボットががちゃがちゃと変形したりするフェチ感」があれば更に万々歳だったと思うが、それは(あるかは分からないが)続編に期待したいところ。

 

日本の戦隊モノが源流だけど、それとは違った文化を築いてきたコンテンツが、回りまわって近年の戦隊モノと同じエッセンスを備えて世に送り出された。単なる「流行り」と吐いて捨てるのは簡単だが、素直に「5人とも!よくやった!お疲れさん!」と激励してあげたい、そんな愛すべき作品だったように感じる。

 

あと、音楽がブライアン・タイラーなのも良かったですね。『アイアンマン3』や『エイジ・オブ・ウルトロン』、『グランドイリュージョン』の人です。

 

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